令和2年6月21日壊れていく伊吹山


■今年は去年と違って、頂上台地のシカ防護AF柵が完璧に張られています。大いに期待できるのですが、やはり東エリア(頂上台地を西、中央、東に分けて囲い込んでいます)で10頭ほど侵入したシカを数えました。重複計数を考えてもその半分以上はいたでしょう。東エリアには灌木帯という隠れ場所があって、追い出しきれなかったと関係者から聞きました。難しい問題です。

■下山時に、地元の方々が登山道を補修しておられました。こういったご苦労があって、私たちは楽しんで登ることができます。感謝。

■今年気になることがあって、正面登山道の7合目付近には昨年までシカの不嗜好のイブキガラシがたくさん生えていたのですが、今年はほとんど無く、荒れた斜面がむき出しになっていました。いよいよ食べるものがなくなって、イブキガラシまでも食べるようになったのでしょうか。シカは餌がなくなると嫌いな植物まで食べるようになると何かの本に書いてありました。いよいよ末期症状。中国発の新型コロナウィルス症の蔓延で登山自粛ムードが続き、登山者が減った隙にシカが広い範囲を跋扈していたのではないかと疑います。

■5合目から7合目くらいまで生えている光沢のある葉を付けているのは、コクサギとかいうシカの不嗜好植物とのこと。こうなったらコクサギに踏ん張ってもらうしかないのかと思うと暗澹たる気持ち。5合目以上は急斜面。大規模な崩落が起こっても不思議でない。小規模な崩落はすでに起きている。登山道が崩れてきているのがその証拠。今回、こぶし大の石が勢いよく私の数メートル先を転がって行きました。

■いくつかの伊吹山の草花に関する写真集には確かにニッコウキスゲやオオバギボウシ、シモツケソウの大群落が写っています。もうその頃の状態に戻ることはないかもしれません。今やニッコウキスゲの姿を見ることができなくなってしまいました。いかに頂上台地の多様な植物を守れるか。自分にできることは少しでも多く登ってその都度協力金を納めること伊吹山を守る自然再生協議会の後押しをするしかない。

■伊吹薬草の里から登山口へ向かう途中。


■登山口前のインフォメーションセンター。きれいな写真がたくさん貼ってある。


■貴重な昔の伊吹山の写真


■現在置かれている伊吹山の課題





■植林の中を登って、視界が開けると1合目。目に入ったクサフジ 07:41


■2合目


■木陰に咲いていたサワギク


■3合目からの雄大な伊吹山


■ユウスゲ保護区内のイブキフウロ?


■ハクサンフウロ


■エゾフウロ(萼片の毛の多さで判断)


■ユウスゲ保護区のユウスゲも咲き始めている。


■キバナノレンリソウ








■保護区内のササユリ


■クララ


■イブキトラノオ





■西側の尾根下の荒れた斜面を見るとシカが5頭


■草が減ってコブ状に残っているのはシカの食害が進んだ証拠。緑が残っているのはシカが食べない低木のコクサギ群落。伊吹もぐさの原料となるヨモギは見当たらない。


■手前の緑がコクサギ


■尾根にシカ


■イブキガラシ。シカの不嗜好植物らしいが、今年は非常に少ない。昨年までは、他の植物がシカに食べられた後に勢力を拡大してきた。今年は、これまで食べるようになったのか。シカは食べるものがなくなると、それまで食べなかった植物まで食べるようになるとのこと。いよいよ末期症状か。





■完全に裸地化した斜面にシカ1頭





■ヒメレンゲ


■クサタチバナ。これもシカの不嗜好。


■キバナハタザオ


■オドリコソウ






■前回仮補修した柵。柵がなければ手前のようになってしまう。


■今年は完璧に張られたように見えるAF規格柵


■10:01


■特産種のコバノミミナグサ


■中央。今年は花が咲き乱れる姿が見られるのか。





■東エリアへ。こちらは外よりはましだけど、裸地化が進みつつある。


■足下にコナスビ


■ヒヨクソウ





■昨年から網が外されたままのスポット防護区。ここにニッコウキスゲが少しだけど確かに残っていた。昨年から跡形もなくなっている。


■青木繁さん監修:写真・文橋本猛さんの「伊吹山花散歩」という写真集にはドライブウェイを見下ろすおそらくこの付近に、ニッコウキスゲの群落が写っている。写真あらたひでひろさん:解説村瀬忠義さんの「伊吹山のお花畑」にはオオバギボウシの一大群落の写真が載せてある。どちらも、シカの好物。両写真集にはシモツケソウの大群落も写っている。後者には緑に囲まれた正面登山道の写真もあり、かつての山頂や中腹の姿を「美しい写真」で見られる貴重な記録。


■東端の荒れた斜面


■奥に濃尾平野


■荒れた斜面の向こう側に笹又の畑が見える。この谷間の畑も今は完全に獣害防止柵で囲われ、登山口下の駐車スペースまで行くまでに2回防護柵の扉を開けなければならなくなった。かつて、この谷間をテレマークスキーで滑ったことがあるけど、今はできなくなった。


■シカに蹂躙されていく北斜面


■左に金属柵。この中だけ草の背丈が高い。その右のポールは一昨年まであったスポット防護区の名残。ここにもかろうじて数輪のニッコウキスゲが残っていたのに。


■外と変わらなくなった。というより、周りより若干草の背丈が低い。まだシカにとって美味しい草が残ってたのを集中して食べたからかもしれない。


■入り込んでいるシカ1頭


■3つめの網が下ろされたスポット防護区の名残。ここにもニッコウキスゲが残っていたのに。守れるものを守らなかった。


■シカの不嗜好植物と言われるクサタチバナは普通に咲いている。


■いつも昼間にシカがたむろしているエリア内の「シカ牧場」草がなくなっている。


■木陰で休む1頭





■クサタチバナは咲いている。

















■西エリアへ。カノコソウが咲きかけ。


■やたらとクサタチバナが多い気がする。


■伊吹山が南西限といわれるグンナイフウロ


■柵がなければとっくに消えてしまっていたんだろうな。


■北尾根も蝕まれている。











■ウマノアシガタ


■石灰岩地特有のヒメフウロ。小さくて気がつかずに通り過ぎる人が多い。


■イブキシモツケ





■鼻が高い美人さん。





■さえずるウグイス


■ウスバシロチョウ





■展望ピークから





■シカの恐ろしい威力を感じる場所。手前が柵の外。


■草がなくなればこれもいなくなる。そうなると幼虫時にこれを食べるヒメボタルもいなくなる。





■ほとんど裸地の西の尾根付近。表土が流されているのがわかる。


■コクサギがなんとか緑を保っている。しかし、ひどい状態。


■イブキガラシさえ生えなくなってしまった。


■なにかされている。


■裸地化がすすんで、澪筋ができてしまった登山道に土留めを設置されている地元の方々。


■大変な作業をありがとうございます。





■どれだけ裸地化が進むのだろうか。コクサギは持ちこたえてくれるか?


■3合目林内から。ここからは荒々しい一面も見られる。


■ナワシロイチゴ


■白く禿げた部分付近に合計10頭のシカ


■末期症状の荒れた斜面。どうしたら防げるのだろう。想像もつかない。


■1頭


■岩の上で1頭が休んでいる?


■いい加減いやになってきた。


■雰囲気が違うやつがいる。


■ニホンカモシカ。シカが増えすぎて住みにくくなったんでは?


■再びユウスゲ保護区





■ユウスゲ保護区には扉と観察路が設けてある。中へ入って撮ったササユリ。





■ヒョウモンチョウ





■ユウスゲ





■3合目から2合目へ向かう登山道で。ここまで来ると異常を通り越してる。


■杓子の森経由


■登山口のケカチの清水 14:38


■今日は午後も開館していた。


■末期症状の斜面を見ていつもより精神的なダメージが大きい一日。できることは少しでも多く登って協力金を納めること。後は「伊吹山守る自然再生協議会」の活躍を期待するしかない。


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