イヌワシが危ない!

令和4年にも複数回伊吹山に登りましたが、この記事で問題にしている尾根に入り込むカメラマンは見られませんでした。イヌワシ愛好家の皆様の間でもやはり問題にしていただいているような気がしてなりません。そうであればありがたいことです。(R4。10.31)

※末尾に情報(資料の引用)を追記しました。(R3.8.23)


問題提起せざるを得ない。「一部の」イヌワシ撮りの方々。イヌワシの狩り場(餌場)の中へ堂々と入り込み、長時間居座って、イヌワシに与える影響を想像できないのかと。自分の行為でイヌワシが危機に瀕しても良いのかと。

■昨年に続き、今年も山地草原の規制線を越えて、イヌワシが餌を探して飛来する西の尾根に入り込み、丈夫な三脚にカメラと大きなレンズをセットするイヌワシ撮りのカメラマン。しかも今回(令和2年8月10日)は6合目半位の標高まで降りていく人も。

■案の定、最下部の人が三脚を構えようとする時に、イヌワシが至近距離に現れ、その後すぐに鉱山の方へ反転して消えてしまった。最近、某調査会社の講演会で聞いたところでは、「昨年、幼鳥が通常以上に親を呼ぶ鳴き声を出していた。餌が少なくなっている可能性がある」とのこと。弱って飛べなくなった理由の一端がわかったような気がする。

■写真さえ撮れればイヌワシが伊吹山からいなくなっても良いのか? そんなイヌワシを危機に陥れかねない行為をして撮った写真なんて価値はない。ドライブウェイでは、わざわざ餌を置いて近くへおびき寄せようとする人もいると聞いた(上記講演会)。一部の人とはいえなんて身勝手なと思う。

■イヌワシを撮る人でもちゃんとマナーを守っている若者もいた(後述)。その方のように、伊吹山に親子3羽しかいないイヌワシを見守りながら撮ってくださいよと切に願う。



■登り5合目休憩所から西の尾根すれすれを飛ぶイヌワシを撮影。6時50分頃。


■200mm×2倍テレコン×APSC1.6倍のレンズでこの小ささ。


■餌を探しているのか朝のウォーミングアップか。



■トリミング。今年生まれた幼鳥ではなくおそらく親の片方。白い斑紋(三つ星)がない。風切り羽根も欠損しているように見える。


■見とれながらもシャッターを押しつづける。近くに来てほしい。


■シカの真上を飛ぶ。


■ずっと尾根の上近くを飛んでいる。イヌワシはわざと地面すれすれに飛んで獲物を驚かせ、見つかりやすくすることがあると聞いた。


■時折、高く舞う。


■トリミング





■トリミング。空の王者の貫禄。


■結局近くには来なかった。日によっては3合目のガレ場近くを飛び回ることもあった。あの尾根付近の全体を狩り場の一部としている。

■この後降下し、行導岩(平等岩)の西側すぐに着地(or着木)したようで、姿が見えなくなった。その後登山道を登りながら、再び飛ばないか気にしていたが、結局飛ばず。また下山時に飛んでいるかもと期待。


■ところが11時頃、頂上台地の遊歩道を回り、展望ピークから琵琶湖方向を見ると尾根に二人。遊歩道の規制線を越えて入り込んでいる。7合目半位の標高。登りにイヌワシが舞っていたまさにその下


■イヌワシの繁殖を調査される人は、繁殖が始まる前に巣が見える範囲、例えば谷を挟んだ向かい側に人間の気配を隠すための小さな観察小屋を建て、夜中のうちに気づかれないように出入りすると聞いた。昼間は一度入ると夜まで出ないような用心の仕方。もちろん食事や用を足すときもその中。

■しかし、この方々はズボンとレンズカバーは迷彩色なのに、銀色の目立つ日傘を置いている。まさにイヌワシに警戒心を与えるちぐはぐさ。迷彩はただの「ファッション」なのか? 長時間居座って。こんな見通しの良いところで用を足す時はどうしているのか?


■下の写真のように早朝にはたくさんのシカがいた。それもいなくなるほど攪乱していることになぜ気づかない?それとも気にしていないだけか?もし、シカだけでなくアナグマやノウサギなど小動物がいたとしても同じように逃げてるだろう。動物は人間が気づくより先に人間に気づいて逃げている。あなたたちの行動は、シカだけでなくツキノワグマもニホンカモシカもイヌワシも見ている。私だけではない。





■さらにもう一人下っている。登山者かと思ったが、そこを降りてもガレ場に行き着くだけなので、そうではなさそう。


やはり三脚をセットした。6合目半位の標高。この直前にさらに向こう側の鉱山方向からイヌワシが至近距離に現れたが、すぐに反転して消えた。人がそこにいたら地面すれすれに飛行するイヌワシの餌動物の追い出し行動はとれない。下山しながら様子を見ていたが結局イヌワシは姿を現さなかった。このあたりの岩場ではたまにニホンカモシカやツキノワグマも姿を現す野生の世界


■この人たちは完全にイヌワシの狩り場やカモシカの餌場を侵害している。その自覚がない。単に迫力のある写真をとって自己満足するだけの「似非ナチュラリスト」。公的な調査や保護活動でなければ入らないでほしい。登山者とイヌワシは長年共存してきた。それは豊かな自然の下、一定のルールが守られていたからだ。

■次の写真は昨年の7月28日のもの。これまで毎年のように登ってきたが、尾根に侵入する人を見たのは昨年が初めて。おそらく、増えすぎたシカにより植生が破壊されて藪が消え歩きやすくなったんだろう。つまりはそれだけ生態系が貧弱になって、イヌワシも餌が採りにくくなっているはず。だからこそ、少しでも餌を採りやすくしてあげなければならない。特にカメラマンは長時間居座る。それが、いかに脅威か簡単に想像できるはずなのに。


■一方で、昨年同じ日、遊歩道の規制線の内側でカメラをセットする若者。規制線を越えている人を指して遠慮がちに「本当はだめなんだけど」「あの人たちは成鳥を撮っている」と言っていた。この若者のようにマナーを守るカメラマンも多いと信じたい。この若者によると幼鳥を撮っているとのこと。なかなか飛ばないと言っていた。昨年の幼鳥が弱って保護されたのは7月と聞いている。すでに弱っていたのか、保護された後か。


■今回の一週間前に3合目から偶然撮ることができた今年巣立った幼鳥。昨年の幼鳥が弱って死んだように、餌が採りにくい状態なのは明白なのだから、餌場を占拠するようなことはやめていただきたい。法律で規制がないからと言って、やっていいこととだめなことぐらい普通の大人なら判断できるはず。若者を見習ってほしい。





■現在、滋賀に4ペア程度しかいないと言われるイヌワシ。そのうち1ペアとその子供が伊吹山にいる。いつまでも優雅に伊吹の空を舞う姿を見続けたい。公的機関や自然保護関係の団体以外に見守ることができるのは、伊吹山のイヌワシの貴重さを知っている我々やイヌワシ撮りのカメラマンしかいない

 (令和2年8月11日記。同9月3日、11日、令和4年10月31日 一部文言を削除・修正、説明追加)


【追記】 令和3年8月23日


■環境省のホームページのイヌワシ保護増殖計画の関連資料の中に「イヌワシ保護増殖事業マスタープラン」(平成 27 年7月1日イヌワシ保護増殖検討会)というものがあり、その中でイヌワシ個体群の減少要因が書かれてありました。

■イヌワシ減少(個体群、繁殖成功率)の要因として因果関係が認められるものとして
@森林の荒廃(うっぺい化)
A開放地の減少
B放牧地や採草地の減少
C各種工事やレジャー,写真撮影等の人間活動に伴う騒音や不用意な接近による繁殖阻害
があげられています。

■また、減少要因の可能性が高いものとして、
@大規模開発による生息地の消失
Aシカの生息密度の過度な増加による下層植生破壊がイヌワシの餌動物の生息環境を悪化させている
Bダイオキシン類,農薬,重金属等環境汚染物質の生物濃縮による影響
などがあげられています。

■やはり、狩り場を守り、過度な登山者やカメラマン等人間によるインパクトを極力減らし、シカの食害による下層植生の衰退を防ぐ必要があります。登山者もカメラマンもみだりにイヌワシの狩り場や繁殖地に侵入し、長時間居座ることはやめましょう。


※今年、5月と8月に伊吹山に登りましたが、なぜか道のない尾根を歩いている登山者(1名)はいましたが、カメラマンはいませんでした。このページを読んでいただいた訳ではないと思いますが、イヌワシ撮りの方々の間でも問題にしてくださっているのかもしれません。できれば、イヌワシ撮りの方々も、生態系保護のため、登山協力金にご協力いただけたらありがたいです。


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