令和2年2月16日 協力金が不足しています!!


伊吹山の自然を守るには協力金が必要です!!
※伊吹山の現状を見てきて、自然豊かだった伊吹山をどうしても回復させたくて考えるところを記しました。やはり、専門家でもなく、手段も持たない自分たちにできることは、これしかないと思います。できるだけ客観的に書こうとしていますが、正確でない部分もあるかもしれません。ご容赦ください。


【自然との出会い】
(この部分は自己紹介です。とばしてご覧いただいて結構です)
■私あつげんは平成20年頃から、山歩きを始めた、山岳会にも、ボランティア団体にも参加していない主に単独日帰りメインの山好きです。
 また、子供の頃から、昆虫が好きで、大阪市という、子供にとって、価値の高いカブトムシやクワガタムシが周りにいないなかでも、虫取り網を振り回しながらチョウやトンボを追いかけ回していました。

■中学生の頃からは、魚、特に身近な淡水魚の飼育に凝り出し、近所で掬ったメダカやフナ、淀川で釣ったスゴモロコ(最近、琵琶湖のスゴモロコとは別亜種のコウライモロコと判明)やシロヒレタビラを生きたまま持ち帰って飼育していました。それが高じて、ある大学の水産学科に入学しました。

■ところがその頃に自動車免許を取って、就職後に札幌に配属された4年目くらいまで、モータースポーツにはまり、車の窓から眺める以外は、自然を楽しむことは少なくなりました。

■就職5年目から滋賀県内に住むようになって、今度は原点回帰したごとく、フライロッドを抱えて県内の渓流を中心にイワナやアマゴを釣り歩いていました。そして、あることをきっかけに山歩きをするようになりました。今思うと、一部の時期を除いて自然と戯れながら生きてきましたので、自然の変化には敏感な方だと思います。
(写真はクリックすると拡大)



【伊吹山に魅せられて】
■そして、初めて登った伊吹山。それは職場の友人とテレマークスキーを始めて間もない冬に登った時です。5合目からの雪の急登と、9合目まで登り切ってから琵琶湖を見下ろす高度感に圧倒され、怖くなって9合目から滑るのをやめて、7合目くらいまで、スキーを担いだまま下りました。

■そして、平成21年11月に引き続き、平成22年の6月初めに単独で登った時に見たヨモギやオドリコソウなど一面の草花に混じって咲いているグンナイフウロやニリンソウなど今まで見たことのない特徴的な花やかわいらしい花に驚きました。

■その後、夏のハクサンフウロやシモツケソウなどに目を奪われ、少しずつ花の名前を覚えるにつれ、北方種と南方種が出合う植物の分布上特徴的な山であること、グンナイフウロやイブキフウロなどの南西限種、ルリトラノオやコイブキアザミなどの固有種やヒメフウロなど石灰岩を好む草花が多いことを知り、如何に貴重な山であるのか理解できるようになりました。昆虫好きながらウスバシロチョウも初めて見ました。

■また、植生が豊かで石灰岩質の土地であることからカタツムリなど陸生貝類が多いこと、ニホンカモシカやツキノワグマ、高地の草原に依存するイヌワシなどの貴重な大型動物もいることなど、石灰鉱山が見た目を損ねているにもかかわらず、知れば知るほど素晴らしい山だと実感するようになりました。



【伊吹山の急激な変化】
■ところが、登りはじめてから数年で様子が変わってきました。激変と言ってもいいくらいです。それまで青々とした草原の中の登山道を、草花を眺めながら歩いていたのに、いつしか草の背丈が低くなったように感じ、気が付くと裸地が広がっており、さらには、登山道と草原の境目もわかりづらくなるほど登山道は荒れ、獣道があちらこちらにでき、中にはそこに登山者が踏み込んで、踏み固められ道の様になった偽登山道も現れてきました。



■なぜこのような状態になったかは、京大芦生演習林や福井嶺南〜野坂山地の山々、鈴鹿山脈で問題になっている増えすぎたニホンジカによるものとすぐに理解できました。しかし、話には聞いていましたが、より高所の伊吹山で、ここまで急速にニホンジカの害が及び、防護柵がなければ本来の植生が維持できないことになるとは、伊吹山に登り始めた平成21年には思いもよらなかったことです。



■ニホンジカは雪が苦手なことから、温暖化で雪が少なくなり、徐々に鈴鹿から移動してきたり、繁殖の条件が良くなったりして増えてきたのでしょう。世界一の観測記録である11.8mの積雪深も、もはや遠い昔のことになりました。



【伊吹山の現状】
■登り始めてから10年ほど経った現在の3合目から9合目までの荒れ方には驚きます。今では5合目登山道と弥高尾根の間の平地には背の高い草は、ニホンジカの不嗜好植物を除いてなくなり、弥高尾根方向から吹く風は獣臭い状態。もちろんそこかしこにニホンジカの糞粒が散らばっています。

■また、6合目から8合目くらいまでの裸地化しつつあった斜面には、初夏に一見菜の花のように黄色の綺麗な花を咲かせるイブキガラシが蔓延るようになりました。これはニホンジカの不嗜好植物で、競争相手となっていたその他の植物がニホンジカに食べられてなくなった後に急速に分布を広げているものです。単純化した「お花畑」の花の季節を過ぎて夏に枯れるとそこに残るのは立ち枯れた状態のイブキガラシによる灰色の殺風景な斜面だけ。かろうじて8合目周辺のイブキジャコウソウが色を添えるのみとなります。これもニホンジカが食べないようです。



【ニホンジカの破壊力】
■ニホンジカのインパクトは大変なもので、知らない人にとっては想像以上でしょう。しかし、鈴鹿山脈の霊仙や御池岳の10年以上前と今の姿を知っている人には簡単に想像ができるでしょう。



■そのニホンジカ。今では伊吹山で簡単に見つかる動物となりました。例えば昼間であれば、西側の石灰鉱山の手前の尾根付近をよく見ると、ニホンジカが多いときには20頭以上も見えることがあります。



■また、頂上台地でも人目に付きにくい中央遊歩道の東側にある灌木帯付近の草原では、初夏から秋の草花が茂る季節には必ず数頭の群れを観察できます。その場所の草は背が低くなり、裸地化しつつあります。そこはまるで牧場の様に多様性を失った草原になっており、「シカ牧場」と名付けたりもしています。夜や早朝に登ると、もっと広い範囲で採食しているニホンジカを観察することができます。



【間接効果】
■ニホンジカの影響は、草花だけでなく、色々な動物にとっても間接的な影響(間接効果)を与えているだろうことは、容易に想像できます。食草が少なくなることで、ニホンカモシカや、ツキノワグマなどの草食、雑食の大型動物、様々な陸生貝類とそれを幼虫時代に食べるヒメボタル、チョウやガの仲間、バッタやイナゴ、それらを食べる鳥類やは虫類など様々な動植物に影響を与えていることでしょう。

単一の動物が異常に優占してしまう弊害の恐ろしさは、外来魚やカワウ、オオバナミズキンバイ、オオキンケイギクなど繁殖力旺盛な動植物が同所的に存在する他の動植物を駆逐し、その駆除に長年の多大な労力と予算を投入してもなかなか解決に至らないことでもわかります。



【現在の対策とその隙間】
■現在、このニホンジカからの防護を初めとする保全対策をしているのが、行政(環境省、滋賀県、米原市、長浜市、岐阜県など)とボランティア団体、学識経験者、地元自治会、ドライブウェイ運営会社、鉱山会社などから組織された「伊吹山自然再生協議会」(現在は「伊吹山を守る自然再生協議会」)です。設立されたのが平成20年で、その当時の議事録を眺めてみると、主にセイヨウタンポポなどの外来植物、登山者や観光客、イヌワシ撮影者による踏み荒らし対策が主眼だったようです。

■それが年を経るうちにニホンジカの害が顕著になり、その対策を含めた保全対策資金として平成25年頃から入山協力金導入を検討するようになりました。そしてアンケート調査を行って、多くの賛同を得られることを確認した上で平成26年からの試験導入に続き、平成27年からの本格運用に至り今日まで継続されています(1回300円)

■そして平成28年には、京大芦生演習林で実績のあるAF規格と呼ばれる簡易な支柱と網で構成するニホンジカ防護柵で、頂上台地を西、中央、東の3区画に分けて、それぞれのほぼ全域(集水域)を囲い込む「集水域防護」というニホンジカを絶対に入らせないことにより、「入ることができない場所と学習させる」防護柵の設置が完成しました。

■しかし、この方法は、雪の季節に備えていったん網をおろし、雪解け以降に網を張り直すという作業があり、どうしてもその隙間を縫って、オオイタヤメイゲツなどの灌木帯という隠れ場所のある東エリアでは、数頭〜十数頭が防護柵の内側に残る(あるいは侵入する)という状態が続きました。時には東だけでなく中央エリアにいるニホンジカも見えることがありました。

■一方で、灌木帯が少ない西エリアでは完全にニホンジカをシャットアウトできており、そのエリアに関しては、温暖化等でアカソやフジテンニンソウが蔓延りつつあるものの夏にはシモツケソウ、アザミ類、クガイソウ、ルリトラノオ、コオニユリ・・・といった多様な草花が残った状態になり、やはり柵の効果が実感できるものとなりました。

■柵のある頂上台地より下部の斜面については裸地化が進んで目も当てられない状態ですが、防護柵の設置をうまく運用すれば、少なくとも頂上台地だけは守れるものと確信しました。



■ところが、平成31年(令和元年)春の柵の網上げが前年よりも遅く、特に東エリアではさらに遅く、網を張ったところでも破れたボロボロ状態でニホンジカに入られ放題であり、その状態がとうとう晩秋まで続いてしまいました。その間、徐々に網の交換が行われてはいましたが、東エリアでは、結局、秋まで間に合わず、東エリアでは、めぼしい花がほとんどないような状態で終わってしまいました。ボロボロになる原因として、ニホンジカが中へ入ろうとして網を執拗にかじり、穴を開けてしまうことが前年にはわかっており、その影響も大きかったと思います。


■一部、集水域防護とは別に以前から3カ所ほど網で囲われた小区画(スポット防護区)があり、そこでは平成30年までは数えるほどですがニッコウキスゲが夏に花を咲かせていましたが、令和元年には網が張られていない状態で結局ニッコウキスゲの花を一輪も見ることができずに夏が終わってしまいました。

■なお、ニホンジカが増えるまでは、伊吹山にはニッコウキスゲの群落やオオバギボウシの一大群落があったそうです。私が登り始めた平成21年頃で、すでにオオバギボウシの大群落は見た記憶がありません。


■このことで、協議会は何をやっていたのかと、何か事情があるにしても、優先順位を付けて守るべきものを何故守らなかったのかと、自称サポーターのつもりの自分が裏切られたような気がして、怒りに近い感情を持ってしまいました。その感情に対して、反省するきっかけを与えてくれたのが、とある方の令和2年2月11日付けのフェイスブックです。ローカル新聞の「滋賀夕刊米原版」に「伊吹山を守る自然再生協議会」に関する記事と、その方が独自に撮られた現状の写真がUPされていました。



【資金不足】
■これを読んで、昨年(令和元年)の頂上台地のAF柵の半分以上が秋までボロボロであった理由がわかりました。記事には直接書かれてはいませんでしたが、要するに資金不足。いったん頂上台地全域を柵で囲い込んでも、メンテナンスをしっかりする資金が不足しているとことが、記事以外に、ボロボロになったAF柵の写真とともに、写真の注釈として書かれていました。協力金を徴収し始めた頃、順調だったと聞いていたので、資金面では大丈夫だと安心していましたが、認識を改めました。

■その滋賀夕刊の記事の中で特に気になる部分を列記してみます。

○トレイルラン「夢高原かっとび伊吹」への協力、呼びかけを求める声が相次いだ。

○表登山道には徴収員を配置し、8割を超える登山者から協力を得ている一方、ドライブウェイは遊歩道に募金箱が置いてあるだけ。

○「かっとび伊吹」は昨年1209人の参加があったが、入山協力金を得られたのは379人(約31%)。練習する人たちがコースを逸脱し、自然破壊に繋がっているケースもあり

■「かっとび」に関しては、その日と知らずに登ってしまって、追い立てられたり、道を譲るのに気を遣ったりと、落ち着いて登っていられませんでした。二度と同じ日に登りたくないと思っていました(が、下の写真は2回目)。しかし、市が関係したイベントだから協議会の事務局でもある市が呼びかけて、協力金を、同じ山の仲間である参加者みんなが払ってくださっているものだと思っていました。



【山や自然を愛する者として】
■記事にはトレイルランニングに関して厳しい意見も書かれていますが、個人の趣味ですし、通常の登山者だってショートカットしたり、コースを外れたりして、インパクトを与えているので、インパクトの程度を比較するデータがない以上とやかく言えるものではないのですが、登る人みんなで「ただの土や岩の塊でない」価値のある伊吹山の現在置かれている状況を認識しながら登ることが大切だと思います。そうすれば、もっと協力金に対してもご理解いただけるはずです。

■恐らく、広報が足りないのでしょう。広報にも費用がかかるのは当然だけれども、より効果的な方法がないものでしょうか。

■地元には自治会を始め、ボランティアで登山道の整備をされている方々もおられ、このことも是非皆様に知っていただきたい。これらの方々の地道なご努力によって我々は気持ちよく登らせていただいています。シカが増える前には、登山道の草刈りを重い草刈り機をぶら下げながら、下から上までされていました。地元の子供たちと一緒に清掃登山もされています。山や自然を愛する皆様なら、これらの方々のご苦労もきっとご理解いただけるはず。



■ドライブウェイ利用者は恐らく、割高感のある(と自分は思っています)通行料を払って、トイレを利用する際には任意ですが清掃協力金も必要な中、さらに登山協力金を払うとなると相当躊躇すると思われます。ドライブウェイ運営会社のご協力としっかりとした広報に期待します。そうでなければ、キャッチフレーズ「天空の楽園」なんて、絵空事になってしまいます。

■最近では、広報写真に使えそうな伊吹山の代名詞でもあるシモツケソウの大群落は、伊吹山もりびとの会が守っておられる西エリアの柵で囲まれた試験区だけでしょう。平成30年には、多少なりとも残っていた頂上台地中央部には、令和元年にはほとんど咲いていませんでした。「自然再生協議会」のメンバーの団体の間でも取り組みに対する温度差があると聞きます。山や自然を愛する我々サポータの思いを協力金という形で「自然再生協議会」に届けなければなりません

■さらに、イヌワシを撮るためにドライブウェイ脇の斜面上部に三脚を置いて陣取っておられるたくさんのカメラマンの方々にも是非とも協力金納入に協力していただきたいのです。常に踏み込みがされるガードレールよりも外側は裸地化しています。

■増えすぎたニホンジカや人々によるインパクトによって荒らされ、裸地化が進んでいる伊吹山を見ていると生物の多様性が低下して、伊吹山に1ペアしかいないとされるイヌワシの草原の餌場としての生息環境が損なわれてきている気がしてなりません。募金箱は駐車場からの遊歩道入り口に置かれていますので、ぜひ立ち寄ってご寄付をお願いします。

■協力金はあくまで任意ですが、是非とも利用者みんなで協力できる体制をつくりたいものです。



1回の協力金のため、喫茶店のコーヒーを1杯我慢するだけです。

伊吹山を守るため、趣味や立場を越えて、山や自然を愛するみんなで「伊吹山を守る自然再生協議会」を後押ししましょう!

取り戻そう伊吹山!

協力金にご協力を!!



令和2年2月16日 記(適宜修文しています)


↓より正確な情報はこちらから。
米原市HP
伊吹山を守る自然再生協議会


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